インテル® インテグレーテッド・パフォーマンス・プリミティブ (インテル® IPP) は、一般的な信号/画像処理、コンピューター・ビジョン、データ圧縮、ストリング操作を含む、さまざまな機能を提供するソフトウェア・ライブラリーです。

インテル® IPP は、次のスイート製品の一部としてインストールされます。

また、コミュニティー・ライセンス・プログラム (英語) の下でスタンドアロン・パッケージとして提供されています。

異なる製品スイートで提供されるインテル® IPP 関数のほとんどは同じです。しかし、一部の製品パッケージにのみ含まれているインテル® IPP ライブラリーやドメインもあります。次の表は、各製品スイートで提供されるインテル® IPP の機能をまとめたものです。

インテル® IPP の機能 インテル® Parallel Studio XE インテル® System Studio インテル® IPP スタンドアロン
一般的な関数ドメイン (ストリング操作、 暗号化、 コンピューター・ビジョン、 データ圧縮、 画像処理、 信号処理など)
組込みドメイン用の LTE (Long Term Evolution) 関数 × ×
Android* プラットフォームおよびインテル® Quark® プロセッサー・ベースのプラットフォーム用のインテル® IPP ライブラリー ×
インテル® Xeon Phi™ コプロセッサー用のインテル® IPP ライブラリー ×

準備

環境変数の設定

インテル® IPP をインストール後、ターゲット・プラットフォーム・アーキテクチャーに応じて適切なスクリプトを実行して、IPPROOTLD_LIBRARY_PATH、および NLSPATH 環境変数を設定します。スクリプトは、<install_dir>/ipp/bin にあります。

デフォルトでは、<install_dir> は次のとおりです。

  • root ユーザーの場合: /opt/intel/compilers_and_libraries_2019.x.xxx/linux
  • root 以外のユーザーの場合: $HOME/intel/compilers_and_libraries_2019.x.xxx/linux

システム要件 (英語)

インテル® IPP アプリケーションのビルドと実行

インテル® IPP を初めて使用される方のために、以下に簡単なアプリケーションのサンプルコードを示します。

#include "ipp.h"
#include <stdio.h>
int main(int argc, char* argv[])
{
   const IppLibraryVersion *lib;
   IppStatus status;
   Ipp64u mask, emask;

   /* インテル(R) IPP ライブラリーを初期化します */
   ippInit();
   /* インテル(R) IPP ライブラリーのバージョン情報を取得します */
   lib = ippGetLibVersion();
   printf("%s %s\n", lib->Name, lib->Version);

   /* CPU の機能と選択したライブラリー・レベルで有効な機能を取得します */
   status = ippGetCpuFeatures( &mask, 0 );
   if( ippStsNoErr == status ) {
      emask = ippGetEnabledCpuFeatures();
      printf("Features supported by CPU\tby Intel IPP\n");
      printf("-----------------------------------------\n");
      printf("  ippCPUID_MMX        = ");
      printf("%c\t%c\t",( mask & ippCPUID_MMX ) ? 'Y':'N',( emask & ippCPUID_MMX ) ? 'Y':'N');
      printf("インテル(R) MMX(R) テクノロジー\n");
      printf("  ippCPUID_SSE        = ");
      printf("%c\t%c\t",( mask & ippCPUID_SSE ) ? 'Y':'N',( emask & ippCPUID_SSE ) ? 'Y':'N');
      printf("インテル(R) ストリーミング SIMD 拡張命令\n");
      printf("  ippCPUID_SSE2       = ");
      printf("%c\t%c\t",( mask & ippCPUID_SSE2 ) ? 'Y':'N',( emask & ippCPUID_SSE2 ) ? 'Y':'N');
      printf("インテル(R) ストリーミング SIMD 拡張命令 2\n");
      printf("  ippCPUID_SSE3       = ");
      printf("%c\t%c\t",( mask & ippCPUID_SSE3 ) ? 'Y':'N',( emask & ippCPUID_SSE3 ) ? 'Y':'N');
      printf("インテル(R) ストリーミング SIMD 拡張命令 3\n");
      printf("  ippCPUID_SSSE3      = ");
      printf("%c\t%c\t",( mask & ippCPUID_SSSE3 ) ? 'Y':'N',( emask & ippCPUID_SSSE3 ) ? 'Y':'N');
      printf("インテル(R) ストリーミング SIMD 拡張命令 3 補足命令\n");
      printf("  ippCPUID_MOVBE      = ");
      printf("%c\t%c\t",( mask & ippCPUID_MOVBE ) ? 'Y':'N',( emask & ippCPUID_MOVBE ) ? 'Y':'N');
      printf("プロセッサーによる MOVBE 命令のサポート\n");
      printf("  ippCPUID_SSE41      = ");
      printf("%c\t%c\t",( mask & ippCPUID_SSE41 ) ? 'Y':'N',( emask & ippCPUID_SSE41 ) ? 'Y':'N');
      printf("インテル(R) ストリーミング SIMD 拡張命令 4.1\n");
      printf("  ippCPUID_SSE42      = ");
      printf("%c\t%c\t",( mask & ippCPUID_SSE42 ) ? 'Y':'N',( emask & ippCPUID_SSE42 ) ? 'Y':'N');
      printf("インテル(R) ストリーミング SIMD 拡張命令 4.2\n");
      printf("  ippCPUID_AVX        = ");
      printf("%c\t%c\t",( mask & ippCPUID_AVX ) ? 'Y':'N',( emask & ippCPUID_AVX ) ? 'Y':'N');
      printf("インテル(R) アドバンスト・ベクトル・エクステンション命令セット\n");
      printf("  ippAVX_ENABLEDBYOS  = ");
      printf("%c\t%c\t",( mask & ippAVX_ENABLEDBYOS ) ? 'Y':'N',( emask & ippAVX_ENABLEDBYOS ) ? 'Y':'N');
      printf("OS によるインテル(R) AVX サポート\n");
      printf("  ippCPUID_AES        = ");
      printf("%c\t%c\t",( mask & ippCPUID_AES ) ? 'Y':'N',( emask & ippCPUID_AES ) ? 'Y':'N');
      printf("インテル(R) AES 命令\n");
      printf("  ippCPUID_SHA        = ");
      printf("%c\t%c\t",( mask & ippCPUID_SHA ) ? 'Y':'N',( emask & ippCPUID_SHA ) ? 'Y':'N');
      printf("インテル(R) SHA 命令\n");
      printf("  ippCPUID_CLMUL      = ");
      printf("%c\t%c\t",( mask & ippCPUID_CLMUL ) ? 'Y':'N',( emask & ippCPUID_CLMUL ) ? 'Y':'N');
      printf("PCLMULQDQ 命令\n");
      printf("  ippCPUID_RDRAND     = ");
      printf("%c\t%c\t",( mask & ippCPUID_RDRAND ) ? 'Y':'N',( emask & ippCPUID_RDRAND ) ? 'Y':'N');
      printf("乱数読み取り命令\n");
      printf("  ippCPUID_F16C       = ");
      printf("%c\t%c\t",( mask & ippCPUID_F16C ) ? 'Y':'N',( emask & ippCPUID_F16C ) ? 'Y':'N');
      printf("Float16 命令\n");
      printf("  ippCPUID_AVX2       = ");
      printf("%c\t%c\t",( mask & ippCPUID_AVX2 ) ? 'Y':'N',( emask & ippCPUID_AVX2 ) ? 'Y':'N');
      printf("インテル(R) アドバンスト・ベクトル・エクステンション 2 命令セット\n");
      printf("  ippCPUID_AVX512F    = ");
      printf("%c\t%c\t",( mask & ippCPUID_AVX512F ) ? 'Y':'N',( emask & ippCPUID_AVX512F ) ? 'Y':'N');
      printf("インテル(R) アドバンスト・ベクトル・エクステンション 3.1 命令セット\n");
      printf("  ippCPUID_AVX512CD   = ");
      printf("%c\t%c\t",( mask & ippCPUID_AVX512CD ) ? 'Y':'N',( emask & ippCPUID_AVX512CD ) ? 'Y':'N');
      printf("インテル(R) アドバンスト・ベクトル・エクステンション CD (競合検出) 命令セット\n");
      printf("  ippCPUID_AVX512ER   = ");
      printf("%c\t%c\t",( mask & ippCPUID_AVX512ER ) ? 'Y':'N',( emask & ippCPUID_AVX512ER ) ? 'Y':'N');
      printf("インテル(R) アドバンスト・ベクトル・エクステンション ER 命令セット\n");
      printf("  ippCPUID_ADCOX      = ");
      printf("%c\t%c\t",( mask & ippCPUID_ADCOX ) ? 'Y':'N',( emask & ippCPUID_ADCOX ) ? 'Y':'N');
      printf("ADCX および ADOX 命令\n");
      printf("  ippCPUID_RDSEED     = ");
      printf("%c\t%c\t",( mask & ippCPUID_RDSEED ) ? 'Y':'N',( emask & ippCPUID_RDSEED ) ? 'Y':'N');
      printf("RDSEED 命令\n");
      printf("  ippCPUID_PREFETCHW  = ");
      printf("%c\t%c\t",( mask & ippCPUID_PREFETCHW ) ? 'Y':'N',( emask & ippCPUID_PREFETCHW ) ? 'Y':'N');
      printf("PREFETCHW 命令\n");
      printf("  ippCPUID_KNC        = ");
      printf("%c\t%c\t",( mask & ippCPUID_KNC ) ? 'Y':'N',( emask & ippCPUID_KNC ) ? 'Y':'N');
      printf("インテル(R) Xeon Phi(TM) コプロセッサー命令セット\n");
   }
   return 0;
}

このアプリケーションは、次の 3 つのセクションで構成されています。

  1. インテル® IPP ライブラリーを初期化します。インテル® IPP による最適化を最大限に利用するためには、この処理が必要です。ippInit() により、実行時に最適な実装レイヤーがディスパッチされます。ippInit() なしでインテル® IPP アプリケーションを実行すると、ippCore 以外のドメインで最初にインテル® IPP 関数を呼び出したときに、インテル® IPP ライブラリーが自動初期化され、最小の最適化が実装されます。デバッグシナリオによっては、ディスパッチャーにより選択される最適な実装よりも、ippSetCpuFeatures() で特定の実装を指定したほうが良い場合があります。
  2. ライブラリーのレイヤー名とバージョンを取得します。バージョン情報は、<install_dir>\ipp\include ディレクトリーにある ippversion.h ファイルでも確認できます。
  3. ライブラリー・レイヤーで使用されるハードウェアの最適化と CPU でサポートされるハードウェアの最適化を示します。

上記のサンプルコードをビルドする場合は、次のステップを実行します。

  1. サンプルコードをコピーして、エディターにペーストします。
  2. シェルでコンパイラー変数とインテル® IPP 変数が設定されていることを確認してください。環境変数の設定方法については、「準備」を参照してください。
  3. 次のコマンドを使用してコンパイルします: icc ipptest.cpp -o ipptest -I $IPPROOT/include -L $IPPROOT/lib/<arch> -lippi -lipps -lippcore
    リンクするインテル® IPP ライブラリーの詳細については、『インテル® IPP デベロッパー・ガイド』を参照してください。インテル® Xeon Phi™ コプロセッサー上でのオフロードコンパイルには、次のコマンドを使用します: icc - qoption,link,"--no-undefined" $< -o application test.o -qoffload-option,mic,link," -L$(IPPROOT)/lib/mic -lippi -lipps -lippcore"
    インテル® Xeon Phi™ コプロセッサー上でのインテル® IPP の使用に関する詳細は、<install_dir>/ipp/components サブディレクトリーにある components_and_examples_<target>.zip を展開して、インテル® Xeon Phi™ コプロセッサー向けのマルチスレッド・サンプル (ipp_thread_mic) と関連資料 (ipp-examples.html) を参照してください。
  4. アプリケーションを実行します。

トレーニングとドキュメント

ドキュメント

説明

オンライン・トレーニング (英語)

インテル® IPP トレーニング・リソース。

インテル® IPP デベロッパー・リファレンス (英語)

信号/画像処理、コンピューター・ビジョンに関するインテル® IPP 関数とインターフェイスの詳細な説明が記載されています。

インテル® IPP Cryptography デベロッパー・リファレンス (英語)

インテル® IPP Cryptography 関数の詳細な説明が含まれます。

インテル® IPP デベロッパー・ガイド (英語)

インテル® IPP ライブラリーの設定、開発環境、リンクモードに関する詳細なガイダンスを提供します。

チュートリアル: インテル® IPP による画像の回転とブラー (英語)

インテル® IPP 画像処理関数を使用して画像のボックスブラーを実装する方法を説明します。インテル® ソフトウェア製品のサンプルとチュートリアル (英語) からチュートリアルとサンプルをダウンロードすることもできます。

インテル® IPP 統合ラッパー・デベロッパー・ガイドおよびリファレンス (英語)

インテル® IPP の統合ラッパー C/C++ アプリケーション・プログラミング・インターフェイスに関する詳細と、コードでの使用法に関するガイダンスを提供します。

インテル® IPP サンプル

インテル® IPP ライブラリーのさまざまな機能を説明するサンプルプログラムのコレクションが含まれています。サンプルプログラムは、<install_dir>/ipp/components サブディレクトリーの components_and_examples_<target>.zip にあります。アーカイブを展開すると、documentation サブディレクトリーに ipp-examples.html ドキュメントも含まれています。

インテル® IPP 製品ページ (英語)

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注意事項の改訂 #20110804